書籍紹介


ENT ー精神保健福祉士と精神科病院の長期入院ー

著者:向井智之(Tomoyuki Mukai)(聖徳大学准教授)

 

日本は世界でも群を抜いて精神科病床が多く、患者を長く入院させている収容大国である。その隠され続けてきた精神科病院の内部には、なかなか光が届かない。

 

本書では、筆者がそこで精神保健福祉士として働き、経験したことを基に、“精神保健福祉士とは何か”、“精神科病院の長期入院とは何か”について書き表している。

今回紹介している患者は4人いる。一人は、精神科病院で約40年間の入院生活を経て、ついには退院できないまま病院で死亡した。一人は、長期入院を避けることはできたが、筆者が病院や自己の利益に傾倒したがために患者の利益を損ねた。一人は、約25年間の入院後、不誠実な福祉事務所のケースワーカーに反対されたが、かろうじて退院にこぎつけたものの、3か月ほどで亡くなった。一人は、約50年間の入院後に退院することが出来たが、その歴史を振り返ると、奪われた人生はあまりにも大きかった。

 以上は、私の個人的な経験によるものであって、これが全てではないが、精神保健福祉士と精神科病院の長期入院の問題に関して、その一端は示すことが出来たのではないかと思う。ぜひ、その世界に触れていただきたい。

すでに逝去された筆者の恩師は、初めて精神科病院に勤めたとき、その世界を知ったことで“逃げられない”と腹をくくったそうだ。

※Amazon商品ページへ移動します